データをとらないと研究者として死ぬ…調査対象を目の前にした研究者の「悲壮な覚悟」(前野 ウルド 浩太郎) @gendai_biz

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「新書大賞2018」を受賞し、累計25万部(電子版を含む)を突破した『バッタを倒しにアフリカへ』の続編『バッタを倒すぜ アフリカで』(前野 ウルド 浩太郎著・4月17日発売・光文社新書)が刊行されました。前作では触れられなかった「世界初」の研究内容をふんだんに盛り込んだ、608ページに及ぶ大著です。本記事では本書の第1章より、世界初の発見につながった、モーリタニアでのフィールドワークの様子を紹介します。

※本記事は前野 ウルド 浩太郎著『バッタを倒すぜ アフリカで』から抜粋・編集したものです。

灼熱の大地

夜明けと共に生息地の全貌が鮮明になっていく。生息地では、数は少ないがアカシアの木が生え、枯れかけたススキのような植物(お化けススキと呼ぶ)がポツポツと点在し、バッタの食草となる背丈の低い草がまばらに生えている。

夜間、集団産卵が見られないとき、バッタは植物の上や中に留まり、地表ではまずお見かけしない。早朝、木の上で一晩過ごしたと思われるバッタは地面にふわりと舞い降り、お化けススキの中に一晩隠れていたバッタはポツポツ這い出てきた。どいつもこいつも鮮やかな黄色だ。

交尾相手を巡って争うオスたち

読者の皆様にお贈りする暮らしに役立たない豆知識をここで一つ。

群生相のサバクトビバッタは、羽化直後は赤茶色の体色をしている。約2週間を経て性成熟、すなわち繁殖行動をするようになると、体色は徐々に黄ばみ、そのうち全身が鮮やかな黄色になる。

群生相化した成虫の体表は、メスはほんのりと黄色になり、オスは鮮やかな黄色になる。体の大きさにも雌雄差があり、メスのほうがオスよりも一回り大きい。ただし、一部の雌雄は似たような大きさのため、身体の大きさから雌雄を判別しようとすると間違える可能性がある。「小さめで黄色」だったらまず間違いなくオスだ。

バッタのオスとメスとを瞬時に見分ける無駄な特殊能力を磨きに磨いてきた私の目に映ったバッタたちのほとんどは、オスであった。