<社説>日銀の金融政策 円安への対応手ぬるい:東京新聞 TOKYO Web

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 日銀は25、26両日開いた金融政策決定会合で政策金利の維持を決めた。金融緩和基調は当面続き、過度の円安は事実上放置された形だ。円安による物価高で家計は深刻な痛手を受けている。自国通貨の価値下落に対し、日銀の対応は手ぬるいのではないか。

 会合の結果を受け、円相場は一時、1990年5月以来の1ドル=156円台まで下落した。

 日銀の植田和男総裁は決定会合後の会見で「当面、緩和的な金融環境が継続する」と述べた。一方、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融緩和を見送る姿勢を明確にしており、日米の金利差が一段と開き、円安がさらに加速する可能性は高いだろう。

 日銀は決定会合に合わせ2024年度の物価見通しを従来の2・4%から2・8%に引き上げた。食品の値上げに加え、5月で補助金が打ち切られる電気・ガス代も負担増が避けられず、見通しの引き上げは当然だ。

 ただ物価上昇を予測しながら、それに拍車をかける円安を容認する姿勢は理解に苦しむ。

 円安に対しては鈴木俊一財務相がけん制発言を繰り返しているものの、金融市場の反応は鈍い。もはや「口先介入」だけでは、効果が見込めないのは明らかだ。

 過度の円安を抑制するには、政府は早急に円買い介入に踏み切らねばなるまい。日銀も6月の次回決定会合では金融引き締めをためらわず、政府と協調して円安を抑え込む姿勢を鮮明にすべきだ。

 13年以降、アベノミクスの「第1の矢」であった大規模な金融緩和は長期にわたる円安傾向をもたらした。この間、円安の追い風を受けて、多くの大企業が利潤を上げる一方、新たな事業創造に向けた投資や工夫を怠り、国際的な競争力は失われた。

 このため日銀内に、金融を急速に引き締めれば、脆弱(ぜいじゃく)な国内企業に打撃を与え、景気の足を引っ張りかねないとする懸念があることは理解できなくもない。

 ただ24年3月期決算でも最高益となる大企業が相次ぐ見通しだ。低金利がもたらす「ぬるま湯」に浸る大企業のみが潤い、家計や中小企業が犠牲となる構図はこれ以上放置できない。

 植田総裁には、日銀本来の使命である物価の安定のために、アベノミクスからの本格的な脱出を早急に図るよう強く求めたい。