ハマスが人質2人の映像公開、うつろな表情・泣き崩れる姿…イスラエル揺さぶる

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24日、エルサレムの首相公邸前で人質の解放を訴える人たち=福島利之撮影

 【エルサレム=中西賢司】パレスチナ自治区ガザを支配するイスラム主義組織ハマスが、イスラエルからガザに連れ去った人質の映像を相次いで公開した。イスラエル国内の動揺を誘う狙いは明白だ。ガザ最南部ラファへの侵攻を警告してきたイスラエル側は戦闘終結協議の用意を初めて打診したと報じられ、譲歩姿勢もちらつく。

 ハマスは27日、24日の男性人質(24)に続き、別の人質2人の映像を新たに公開した。2人は、昨年10月に拉致されたキース・シーゲルさん(64)とオムリ・ミランさん(47)。撮影日や場所は不明だが、拘束下で202日たったと述べており、今月25日時点での生存確認になるとの受け止めが広がっている。

27日にハマスが公開した、人質のキース・シーゲルさんが話す映像=ロイター

 黒いシャツ姿のシーゲルさんはうつろな表情を浮かべながら、不安な日々がいつまで続くのかと自問していると打ち明け、29日まで続くユダヤ教の祝祭「過ぎ越し祭」(ペサハ)に触れて「昨年は家族で祝った美しい思い出がある」と言い、泣き崩れた。ミランさんは「(5月の)独立記念日は(家族と)一緒に祝えることを願っている」と語った。

27日にハマスが公開した、人質のオムリ・ミランさんが話す映像=ロイター

 映像公開を受け、シーゲルさんの妻子は動画で声明を出した。娘は「この国の指導者に、泣いて助けを求める父の映像を見るよう要求する」と訴えた。イスラエルメディアによると、ミランさんの父親はテルアビブで開かれた人質解放を求める集会で、政府に対しては「一度でいいから指導力を発揮してほしい」と求めつつ、ハマスには「人としての感情があるのなら彼らを自由にしてほしい」と訴えかけた。

 ハマスが、イスラエル国内で人質133人の解放を実現できないネタニヤフ政権への突き上げが強まっている状況を見据えているのは間違いない。ハマスはイスラエル側からの提案を26日に受け取ったとしている。イスラエルの譲歩提案を知った上で27日に新たな人質映像で畳み掛けた可能性がある。ハマスはこの映像の中で「軍事的圧力では投獄された息子たちの解放に失敗する」とするテロップを流し、ラファ侵攻の準備を整えたイスラエル軍をけん制した。

 イスラエルはハマスへの軍事的圧力を高める一方、人質解放と戦闘停止を巡る交渉では一定の妥協姿勢を示し、硬軟織り交ぜた対応でハマスの出方を見極めようとしている模様だ。

 イスラエル政府は26日、エジプト代表団との協議で、最初の段階で解放を要求する人質の人数を減らすと伝えた。ロイター通信によると、イスラエル外相は27日の地元テレビで、解放で合意すれば「作戦(ラファ侵攻)を中止する」と述べた。

 ハマスはイスラエル側の提案に対し、近く正式に回答するとしている。ただ、米メディアが27日に報じた提案は、ハマスが要求するイスラエル軍のガザからの「完全撤退」に触れておらず、ハマスが人質解放に応じるとは限らない。

 交渉に携わるカタール高官はイスラエル有力紙ハアレツに対し、「合意に近づくたびに双方から妨害工作が行われる」と述べ、合意形成の難しさを指摘した。