次期戦闘機 欧州有事に「ポーランドへの輸出は不可」と言えるか

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森永輔の世界の今日本の将来

  • By  Eisuke Mori
  • Read time:5min
  • 2024.3.29

この記事の3つのポイント

  1. 次期戦闘機だけが「移転可」である理由が不明確
  2. 欧州危機時のNATO加盟国への移転について議論すべき
  3. 閣議決定と与党協議は屋上屋を架すもの

(前編はこちら)

 第2のポイントは、国際共同開発する防衛装備品(完成品)のうち次期戦闘機だけを移転可能とする理由だ。

 参議院における西田実仁・公明党参院会長と岸田文雄首相のやりとりを振り返ると、首相は、次期戦闘機の国際共同開発と移転が必要な理由として、以下の2点を挙げている。

(A)防衛装備品の高度化・高額化が進んでいる。開発のコストやリスクを低減するため共同開発が必要。

(B)英国、イタリアは調達価格を低下させるべく、完成品の第三国移転を推進する。日本にも同等の対応を求めている。これに応えられなければ、日本は国際共同開発・生産のパートナー国として、ふさわしくないと国際的に認識されてしまう。

 (A)(B)とも、次期戦闘機に限った話ではなく、国際共同開発する防衛装備一般に言えることではないだろうか。次期戦闘機を、例えば「次世代潜水艦」に置き換えても違和感はないだろう。村山裕三・同志社大学名誉教授は「成果を輸出するのは防衛装備品の国際共同開発において常識。国際共同開発とはそういうものだ」と指摘する。

 岸田首相の今回の説明で移転を認めるならば、さまざまな国際共同開発品の移転が可能となり、「歯止め」としての意味をなさない。他方、次期戦闘機に限定する決定を順守すれば、今後、他の装備での共同開発が進められなくなる。

英伊と共闘するポーランドへの移転を求められたら

 第3のポイントについて述べる。

 以下は将来起こり得る仮定の話だ。次期戦闘機が配備される2035年以降に、北大西洋条約機構(NATO)とロシアが現在以上に激しい緊張状態に陥ったとする。NATOは抑止力を高めるべく、次期戦闘機の配備拡大を決める。英国とイタリアは、次期戦闘機をNATO標準装備にすることを意図しているので、当然、考え得る想定だ。しかし、英伊の生産能力だけでは足りないので、日本に生産の拡大とポーランドへの移転を求めた。

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