流浪の旅を終えたTポイント 名を捨てて実を取る

→ Оригинал (без защиты от корпорастов) | Изображения из статьи: [1] [2]

  1. TOP
  2. 今週の読みどころ
  3. 流浪の旅を終えたTポイント 名を捨てて実を取る

今週の読みどころ

  • By  Takashi Hara
  • Read time:2min
  • 2024.4.27

写真=Elenarts/stock.adobe.com

 「日本で楽天が躍進した最大の理由は楽天スーパーポイント(現楽天ポイント)によって各種サービスがStickiness(粘着性)を帯びたことにある。ただ、海外ではポイントの概念がなかなか伝わらず苦戦している」

 2008年、台湾楽天市場のスタートを皮切りにグローバル展開を一時加速させた楽天(現楽天グループ)ですが、壁にぶつかりました。当時の楽天の海外拠点責任者の言葉が表しているように、商品を購入した際にポイントが付与され、たまったポイントをまた次回の購入に使うという日本ではなじみの商慣習が国によっては理解されなかったのです。ポイントプログラムが日本で特異な形で発展してきたことの証左といえるでしょう。

 「楽天ポイント」は現在、国内で最も強い共通ポイントに成長しています。楽天が提供するサービスにとどまらず、様々な店舗やサービスの利用でポイントをためることができます。楽天ポイントの躍進をはた目に見ながら、長きにわたって焦燥感に駆られていたのが日本の共通ポイントの草分け的存在である「Tポイント」です。

 日経ビジネスは長年にわたってこの共通ポイントの覇権争いを報じてきました(「日経ビジネスTIME MACHINE」)。Tポイントを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)がヤフー(現Zホールディングス)との提携を発表したのは12年6月です(「Tポイント統一の波紋」)。しかし、徐々にTポイントの加盟店離れが深刻化していきます(「Tポイント四面楚歌、ファミマが楽天・ドコモポイント導入」)。加えて、スマホ決済サービス「PayPay」を始めたヤフー・ソフトバンクとの関係にもすきま風がふき始め、22年4月に両社の関係は解消されました(「ソフトバンク・ヤフー離脱の衝撃 Tポイントは生き残れるか」)。

 迷走を続けたTポイントが新たな提携先として選んだのが個人向け金融サービス「Olive(オリーブ)」を展開する三井住友フィナンシャルグループ(FG)でした(「楽天に真っ向勝負挑む三井住友FG 1カ月で決めたTポイントとの統合」)。長らく親しまれてきたTポイントの名称を捨てることにはなりましたが、決済手段を持つ三井住友FGとの提携は残されていた選択肢の中でも最良の相手だったといえるでしょう。

 4月22日の統合初日からシステム障害に見舞われましたが、新生Vポイントの登場で国内の共通ポイントの覇権争いの構図が大きく変わるのは必至(「新生Vポイントが出足つまずく発進 2日連続で障害発生」)。共通ポイントの勝敗はどれだけ日常生活でためたり、使えたりするかにかかっています。一時は加盟店離れで苦しんだ旧Tポイントですが、開拓を再加速させられれば、先を走る楽天ポイントやNTTドコモの「dポイント」を猛追する可能性も十分にありそうです。

(日経ビジネス電子版編集長 原 隆)

まずは会員登録(無料)

登録会員記事(月150本程度)が閲覧できるほか、会員限定の機能・サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

この記事はシリーズ「今週の読みどころ」に収容されています。フォローすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。

この記事のシリーズ