<始動 新京都市長>新しい風 浸透これから

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今月、教授を務めた慶応大で最終の講義に臨んだ。荷物が片付いた研究室で振り返った(22日、神奈川県で)

 京都市長、松井孝治(63)の就任から1か月を迎えた。

 任期が始まった2月25日以降、庁内外の会議や行事出席、古巣の中央省庁訪問などをこなし、今月25日には10年余り教授を務めた慶応大を退職した。

 「自分自身が変わらなければ、自由 闊達(かったつ) な組織はできない」

 28日の記者会見では、官僚、参院議員、大学教授として歩み、培った自身のこだわりを手放す必要性を語った。「組織や人の垣根を低くする。自分の中にある壁をできるだけ取り除き、色々な人の助言をもらい、現場の感覚でまちづくりをする」。手段の一つとして、市民参加型の行政を実現する「新しい公共」推進プロジェクトチームの新設を表明した。

 庁外出身では28年ぶりという新市長を、周囲はどう受け止めているのか。

 「市教育長出身が2代続き、庁内の文化に染まっていたが、新しい風が吹き込まれ、局面が変わった」。ある市幹部はそう語る。「当たり前にしていた事業も、本来の目的や効果を聞かれて答えられないことがあった。市民感覚に立てていないと気づかされた」

 別の幹部も「市役所自体が変わらないといけない時期」と緊張感を見せる。

 一方、前市長時代からの副市長3人がとどまるなど、「軟着陸を図っている」と見る向きもある。

 与党会派が過半数に届かず、勢力が 拮抗(きっこう) する市議会では、野党の質問に丁寧に応じる姿があった。

 18日に行われた3月議会・予算特別委員会の総括質疑。選挙戦で松井を支えた自民党と第1会派の座を分け合う合同会派「日本維新の会・国民民主党・京都党」の久保田正紀(44)が、「新しい公共」の解釈や課題を尋ねた。松井は即座に手を挙げ、「私が総括的に申し上げて副市長から補足をお許しいただきたい」と前置きして答弁を始めた。

 自民側からは「わざわざ市長が答えなくても良かった」との声も漏れたものの、民主党参院議員時代からその理念を提唱してきた松井は「野党が二番煎じになるのは仕方ないが、思い入れのある質問には素で答えたい。ある意味、相手にもエールを送っている」と言う。

 市議会は27日、松井就任直後の「第1次編成」とした9514億円の新年度一般会計当初予算案や市長給与3割カットの議案などを可決、閉会した。

 ただ、維新関係者は「姿勢は一定評価するが、もう一つの第1会派を無視できないだけで、策略にのみ込まれてはいけない」と警戒心を解いていない。

 市議会が緊張感をはらむ中、自身のカラーをどう打ち出していくのか。

 新年度を前に、松井は市民と未来像を描く「京都基本構想」の策定、人口減少に向き合う人口戦略室の設置を表明。オーバーツーリズムや防災対策、子育て施策を充実する考えも示した。

 だが、庁内からは「これまでも取り組んできた課題で、どう変えようとしているのか具体的な意図がつかめない。現場への浸透もこれから」との声も上がる。

 「突き抜ける世界都市」「新しい公共」「誰にでも居場所と出番のある社会」――。松井は「じっくり状況を見ながら、小さいことからでも理念を具体化し、変えていく」と言葉をかみしめる。

 国内外から注目を集める京都市のトップとして、掲げた政策をどう共有し、実行に移せるか。新市政は本格始動の時期を迎える。(敬称略、おわり)